駆け出しの才能を見出したクロエの創業者”ギャビー・アギョン”

無名のデザイナーを見出す”先見の明”を持っていたChloeの創業者ギャビー・アギョン。

ギャビー・アギョン

1921年エジプトのアレキサンドリア生まれのデザイナー。

Chloeの歴史

創業者であるギャビー・アギョンはエジプトの地で貴族として生を受け、1939年18歳の時、パリに留学を果たし、第二次世界大戦中にフランスへ移住します。そこでフランス式の教育を受けて育ち母親は自宅にお針子を呼び、家族のためにパリの最先端の服を作らせていました。

1945年24歳の時にレイモンド・アギョン(Reimondo Aghion)と結婚し、パリで暮らし始めたギャビーは様々な芸術家たちと行動をともにし交流を深め感性に磨きをかけていきました。

創業

1952年にギャビー・アギョンがフランスのパリにて創業。31歳になる年に閉鎖されたオートクチュールメゾン「ルシアン・ルロン」のアトリエから腕の良い裁縫師を引き抜き、クロエを立ち上げ高級既製服(プレタポルテ)を販売したことが始まりとされています。

これまでの洋服は注文を受けてから製作されるオーダーメイドのような方式が主流であり、一般市民は小さな町の仕立て屋が作る既製服しか選択肢がありませんでした。既製服に関しては質の悪い服しか入手できないような地方もありました。

オートクチュールが主流だったこの時代に、ラグジュアリープレタポルテという高級な生地を使用した衣服を作り注目を浴びます。「プレタポルテ」という言葉を生み出したのがChloeだと言われています。

1956年パリのサンジェルマン・デ・プレにあるカフェ「カフェ・ド・フロール(Cafe de Flore)」で初めてファッションショーを開催しました。 カフェ・ド・フロールは、パリの芸術家やアーティストが集まる人気カフェです。ギャビー・アギョンの打ち出した「ラグジュアリープレタポルテ」の初コレクションは、パリのアーティストに受け入れられ、大盛況を収めます。 こうして、ファッションブランドクロエは、華々しいスタートを切りました。

Chloeの由来

ほとんどのラグジュアリーブランドは、創業者の名前がそのままブランド名に使われていますがChloeに関しては創業者の名前ではありません。

「Chloe」の名前の由来は、ロンゴスによって作られたバレエ作品の「ダフニスとクロエ」が由来とされており、古代ギリシアの恋愛物語に登場するヒロインの「クロエ」が踊る美しいダンスに着想を得てこの名を付けたそうです。

ギャビー・アギョンが見出した才能

設立当初はまだ知名度が低かったクロエですが、1965年にクリエイティブ・ディレクターに抜擢したのが後に「モード界の帝王」と言われる”カール・ラガーフェルド”です。

まだ駆け出しのカールがフリーデザイナーとなった最初の仕事が「Chloe」だったのです。

カールのデザイン力で、Chloeは一躍その名を広めることとなります。

その後カールは一時期退任し再び1992年よりカール・ラガーフェルドが復帰します。 

他にも1997年よりクリエイティブ・ディレクターに就任したのが、ビートルズのポール・マッカートニーの娘で自身のブランドも展開しているデザイナーの”ステラ・マッカートニー”です。

ステラは在籍中に数々のヒット作を生み出しChloeの飛躍に大きく貢献し2001年に退任します。

2011年にはクレア・ワイト ・ケラーが就任。クレア・ワイト・ケラーは2017年まで6年間クロエのクリエイティブ・ディレクターを務め、その後ジバンシィ初の女性デザイナーを務めることになります。

クレアの後釜を務めることになったのが、知名度が低く異例の大抜擢だったナターシャ・ラムゼイ=レヴィ。

このナターシャは、二コラ・ジェスキエールの右腕としてバレンシアガとルイ・ヴィトンで15年間も二コラ・ジェスキエールと共にしていた人物で「Chloe」というブランドを、ブランドのコンセプトを継承しながらもオリジナルの価値を生み出し着実に成長させていきました。

フランスの最高勲章授与

ギャビー・アギョンは文化・産業・商業・創作活動などの分野における民間人の功績を称えられ2013年12月16日にレジオンドヌール勲章を授与されます。

1985年にはリシュモングループの傘下になりクロエの持ち株も全て売却。若手の育成にも尽力し、2014年に創業者のギャビー・アギョンは93歳で人生に幕を下ろしました。

ギャビー・アギョンはクロエの成功について、「竜巻のような生活がアイデアに命を吹き込み、洋服によって具現化させるスピリットを与えた。当時ほとんどのものが実在しておらず、すべてこれから発明させることにワクワクした」とコメントしている。

都会らしさがありながらも控えめで主張し過ぎないシンプルなものが多く、クオリティや華やかさを保ちながらも手ごろな価格が若い女性たちに手が届きやすく、世界中の女性たちに愛されるブランドです。