クリーニング屋さんが教える”酸化と腐敗”が衣類に与えるダメージ。

人間が生きるためには酸素がなくては生きられません。しかし酸素は、取り込むことにより老化が進み、次第に身体を劣化させる毒にもなるのです。

酸化・腐敗

酸化:物質が酸素と化合すること、または水素を失うこと。一般には原子または原子団から電子を取り去ること。

腐敗: 有機物が微生物の作用によって分解され、有毒物質を生じたり悪臭を放つようになったりすること。

酸化防止剤

酸化防止剤とは、自らが酸化することでほかの食品そのものの酸化を防ぐ食品添加物です。

水溶性と脂溶性に大別され 、L-アスコルビン酸(ビタミンC、V.C)、エリソルビン酸(イソアスコルビン酸)、カテキン、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール(ビタミンE、V.E)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)などがあります。

食品を変質させたり劣化させたりする原因として、カビなどの微生物による腐敗が良く知られていますが、空気中の酸素によって起こる食品の酸化もあります。

特に油脂類が酸化されると色や風味が悪くなるばかりでなく、酸化によって生じた過酸化物による消化器障害を引き起こすこともあります。

こうした酸化による品質の低下を防止するのが酸化防止剤です。酸化防止剤は、食品成分に代わって自身が酸化されることによって、食品の酸化を防ぐ作用を示します。

酸化と腐敗

・酸化は空気中の酸素が原因で物質が変質する現象のこと。

例:バナナの成分が酸素と化合して変色する現象。

・腐るは細菌などの微生物が原因で物質が変質する現象のこと。

例:バナナが細菌によって分解され形を変え腐敗臭を出す現象。

しみ・汚れと酸化・腐敗

油脂や食品が酸化や腐敗によって劣化するように、衣類についた食べこぼしや皮脂汚れも酸化や腐敗をする事で当然劣化していきます。

食べこぼしは、食品に発生した微生物が食べこぼしを分解し次第に酸化・腐敗させます。

皮脂汚れは、皮脂についている常在菌がタンパク質を分解し次第に酸化・腐敗させます。

糖分は微生物に分解されると、乳酸や酢酸などの有機酸を生成してPhが低下し酸性に傾きます。

魚、獣肉、牛乳などにはタンパク質が多く含まれており、これらが微生物によって分解されると、窒素を含むアミンやアンモニアが発生してPhが上昇しアルカリ性に傾きます。
さらに、窒素や硫黄を含む化合物が生成するため猛烈に臭くなるうえ、Phが中性からアルカリ性に傾くため腐敗菌が増殖しやすくなります。

繊維と酸化・腐敗

酸化・腐敗した”しみ・汚れ”は、酸性アルカリ性に傾き染色や繊維を劣化させます。

植物性繊維は酸性に弱く動物性繊維はアルカリ性に弱い性質を持っており、時間の経過した”しみ・汚れ”によって劣化していきます。

まとめ

しみや汚れが衣類に与えるダメージは、目に見えないミクロやナノの世界で少しずつ進行していきます。

ドライクリーニングでは水溶性の汚れを完全に除去できないため、クリーニングに出したからといって、そのまま水溶性の汚れを放置していると、蓄積された水溶性のしみ汚れは次第に酸化・腐敗し繊維や染色を壊します。

家庭での洗濯で、除去できない油を含んだしみや汚れを放置して洗濯し続ける事で、繊維は劣化していきます。

要は、しみや汚れは、”早めの対処が肝心”という事です。