クリーニング屋さんが教える塩素系漂白剤”ハイター”の使い方。

衣料用塩素系漂白剤のハイターですが、とても危険な薬品なのでプロのクリーニング屋さんが細かく解説します。

ハイター

品名:塩素系漂白剤・衣料用漂白剤

用途・液性・成分・使い方・使用上の注意

用途・液性・成分・使い方・使用上の注意などを、成分表に沿って細かく見ていきましょう。

液性・成分

液性:アルカリ性

成分:次亜塩素酸ナトリウム(塩素系)、水酸化ナトリウム(アルカリ剤)

細かく見てみると

水(工程剤)、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)、水酸化ナトリウム(アルカリ剤)となっています。

主成分は、次亜塩素酸ナトリウムです。次亜塩素酸ナトリウム液は塩素系殺菌剤のひとつであり非常に強い殺菌効果があります。次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性に調整され、安定した状態になっていますが、もともとはとても分解しやすい不安定な物質です。そのため酸性の物質と反応すると、あっという間に分解がはじまってしまいます。

塩素系の漂白剤と酸性の洗剤(トイレ用洗剤・サンポールなど)が混ざり合ったときに発生する塩素ガスは、強アルカリ性で毒性が強く、実際、家庭での掃除中に、塩素ガスによる死亡事故も起こっています。とても危険なため、塩素ガスを発生させないよう、「混ぜるな危険」と表示されている洗剤の扱いには十分注意しましょう。

次亜塩素酸ナトリウムは、植物性繊維を溶かしますので、コットンや麻の衣類に使用すると染色を壊し繊維を傷めます。

水酸化ナトリウムは非常に強いアルカリ性の化合物です。無臭で吸湿性が高く、タンパク質を激しく分解し、手に付くと皮膚が溶けます。ph14の強アルカリ性で非常に危険な薬品なので取り扱いには十分注意する必要があります。

水酸化ナトリウムはタンパク質を分解しますので、ウールなどの動物性繊維に使用すると脱色し繊維が溶けます。

使えるもの

白無地衣料専用(白無地衣料でも使えないものがありますので注意してください。)

水洗い・家庭洗たくができる白無地のせんい製品(木綿、麻、ポリエステル、アクリル)

<衣料が変色する場合があります>
一部の樹脂加工された製品(ワイシャツのエリ・そで口など)は、黄変することがある。その場合、花王の[ハイドロハイター]で元にもどる。
日焼け止め剤がついた衣類は、ピンク色に変色することがある。その場合、衣料用液体洗剤を塗布してもみ洗いをする。

と、書かれています。

ここまで来ると、使用できる衣類はかなり限定的になることがわかると思います。

木綿、麻、ポリエステル、アクリルとありますが、木綿、麻は塩素に弱いので使用できたとしても必ず繊維を傷めます。ポリエステル、アクリルなどの化学繊維も変色する可能性が十分にあります。

<衣料が変色する場合があります>のところですが、戻る場合もありますが、高い確率で戻りません。

塩素系漂白剤を使用した時点で、樹脂が劣化すると同時に繊維も劣化します。

日焼け止めは、塩素系漂白剤と反応してるので、洗剤を使って日焼け止めを洗い流せれば元に戻りますが、それ以前に衣類の繊維自体が劣化・変色している可能性が高いです。

使えないもの

水洗いできないもの、家庭洗たくできないもの、塩素系漂白剤が使えないもの。

毛、絹、ナイロン、アセテート及びポリウレタンなどの繊維製品、色物・柄物の繊維製品、金属製の付属品(ファスナー、ボタン、ホック等の留具)がついた衣料、獣毛のハケ

繊維自体が変質して黄ばんだものは、漂白剤でも元にもどらない。

とあります。

植物繊維は塩素の酸に弱く、毛・絹などの動物繊維は水酸化ナトリウムのアルカリに弱いので使用不可。

化学繊維も、ナイロン、アセテート及びポリウレタンは変色や劣化を引き起こします。他の化学繊維も高い確率で同じようになります。色柄ものは確実に脱色します。

金属製のものは激しく脆化し、獣毛のハケは動物繊維なので溶けます。

繊維の変質で黄ばんだ衣類は、しみではないので回復しません。むしろ塩素系漂白剤を使うと黄ばみます。

テスト

原液を水で10倍に薄めた液を目立たない部分につけ、5分ほどで変色するものには使わない。

とあります。その通りです。使うときは必ずテストしましょう。

用途

黄ばみ・黒ずみの漂白、衣料の除菌・消臭、赤ちゃんの衣料の漂白

とありますが、ここまで来ると衣類には向いていないことがわかると思います。塩素系漂白剤を使用する際には、大量の水で濯いでください。塩素系漂白剤は非常に強い薬品なので、特に赤ちゃんの衣料に使う場合はよく濯ぐことをおすすめします。

塩素系漂白剤の優れているところは、除菌・殺菌能力が高いところです。布巾やまな板など菌が発生しやすい物には塩素系漂白剤を使う事で高い殺菌効果を発揮します。

まとめ

結果、塩素系漂白剤は衣類の漂白には向いていないことがわかると思います。薄い濃度で使用できたとしても、時間の経過により劣化した繊維は、酸化の進行が早いため変色したり破れやすくなります。

実際、クリーニング店でもしみ抜きで塩素系漂白剤を使うことはほぼありません。

塩素系漂白剤は、シーツや白衣、板前さんの前掛け、コックコートなどの殺菌目的に使用します。

塩素系漂白剤は、衣類には使用せず、お風呂場のカビ取りや、キッチンまわりの除菌・殺菌に使用することをおすすめします。